前回の記事では、Arcserve UDPのベアメタル復旧を使用して、物理WindowsマシンをAHVへ移行する方法を紹介しました。
【P2V】物理Windows Server 2016をAHVへ移行してみる -Arcserve UDP ベアメタル復旧
今回は、前回同様Arcserveのベアメタル復旧を使用して、物理LinuxマシンをNutanix AHVへ移行してみます。ArcserveはNutanix AHVのエージェントレスバックアップやNutanix Filesのバックアップにも対応しており、Nutanixへの移行後にそのままバックアップソフトとしてご使用いただけますのでおすすめです。
※NutanixではP2V用の移行ツールが公式で提供されていないため、Nutanix Readyのパートナーツールを使用することがドキュメントでも記載されています。この記事ではArcserveを使用してP2V移行していますが、Nutanixが正式な手順を公開しているわけではないので、参考程度に自己責任でご活用ください。
参考: Physical-to-Virtual (P2V) migration to AHV
目次
- 目次
- 今回の環境
- 1. Arcserve UDPのインストール
- 2. バックアップサーバ(UDP agent for Linux)のインストール
- 3. バックアッププランの作成
- 4. バックアップの実行
- 5. Live CDの作成
- 6. Live CDをAHVのイメージサービスへ登録
- 7. リストア先となる仮想マシンをAHV上に作成
- 8. Live CDからブートし IPアドレスを設定
- 9. バックアップサーバーからリストア
- 10. まとめ
今回の環境
[移行元]
プラットフォーム: HPE DL 360 Gen10
OS: CentOS 7.3(レガシーBIOS)
[移行先]
AOS 6.5.1.6 LTS
AHV-20220304.242
[使用するバックアップソフト]
Arcserve UDP 8.1
今回の作業イメージは以下の通りです。ベアメタル復旧は、Linuxバックアップサーバ(agent for linux)のみで実施することも可能ですが、その他のバックアップや移行後の運用も考えて、UDP Consoleも導入しつつ作業をしてみたいと思います。
今回はこの物理Linuxマシンをバーチャルな世界にお連れします。
1. Arcserve UDPのインストール
Arcserve UDPのインストールについては、以下記事をご参照ください。
Arcserve UDP 8.1でNutanix AHVのエージェントレスバックアップをしてみる① ~UDP ConsoleとRPSインストール~
今回は、移行先のAHV上に作成したWindows VMへArcserve UDPをインストールしました。これには、UDP ConsoleとRPSとBackup Proxy(Agent)が含まれます。実際の環境では、移行後の運用を考慮に入れて、作成場所をご検討ください。
2. バックアップサーバ(UDP agent for Linux)のインストール
2-1. バックアップサーバについて
ArcserveでLinuxのエージェントベースバックアップを取得する場合は、少なくとも一つのLinux サーバへ「UDP agent for Linux」をインストールする必要があります。これが、Linuxバックアップサーバと呼ばれるものです。
今回は、移行先のAHV上へCentOS 7.3の仮想マシンを作成して「UDP agent for Linux」をインストールし、バックアップサーバとして使用します。
2-2. 事前準備
作成したLinux仮想マシンに対して、必要なアプリケーションなどを事前に導入しておきます。以下は主に必要となるものです。
- sshd
- Perl
- rpc.statd
- mkisofs
- mount.nfs
- mount.cifs
詳細は以下をご確認ください。
Live CD の前提条件の確認(Live CD)
インストール Arcserve Unified Data Protection Agent for Linux
また、CentOS用のLive CDを作成する場合は「squashfs-tools」も必要になりますので、事前にインストールしておきます。
Live CD の前提条件および考慮事項の確認(CentOS用 Live CD)
2-3. UDP agent for Linuxのインストール
バックアップサーバとなるLinuxの事前準備が完了したら、Arcserveから取得した「Arcserve Unified Data Protection Agent for Linux のインストール パッケージ(*.bin ファイル)」をルート配下へ配置します。
合計 671268
-rw-r--r--. 1 root root 0 11月 25 16:30 1
-rw-r--r--. 1 root root 687351362 11月 25 17:12 Arcserve_Unified_Data_Protection_Agent_Linux_8.1.bin
lrwxrwxrwx. 1 root root 7 11月 25 16:27 bin -> usr/bin
dr-xr-xr-x. 4 root root 4096 11月 25 16:53 boot
drwxr-xr-x. 20 root root 3240 11月 25 16:52 dev
drwxr-xr-x. 133 root root 8192 11月 25 17:09 etc
drwxr-xr-x. 3 root root 19 11月 25 16:35 home
準備ができたらインストールを実行します。
[root@centos-agent01 /]# ./Arcserve_Unified_Data_Protection_Agent_Linux_8.1.bin
Extracting ... [Completed]
Please select the language:
1) English
2) Use the system setting language
2
プラットフォームを確認しています...
依存関係を確認しています...
ポートを確認しています...
ポート 67 は現在、別のプログラムによって占有されています。
このポートは、Arcserve UDP Agent(Linux) で PXE ベースの BMR ジョブに使用されています。
インストール処理を続行しますか? [y|n] (デフォルト: n) y
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
中略
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ライセンス契約者が本製品ならびにクラウド サービスのライセンスを米国外で取得した
場合、https://www.arcserve.com/Country-Terms で定める規定が、本製品ならびにクラ
ウド サービスの使用に適用されます。
インストール処理を続行しますか? [y|n] (デフォルト: n) y
インストールが開始され、完了するとAgentが起動します。
パッケージからファイルを抽出しています... [完了]
Arcserve UDP Agent(Linux) を /opt/Arcserve/d2dserver にインストールしています ... [完了]
リストア ユーティリティ パッケージをインストールしています... [完了]
Live CD を作成しています... [完了]
Arcserve UDP Agent(Linux) の Live CD が次の場所に構築されました: /opt/Arcserve/d2dserver/packages
Arcserve UDP Agent(Linux) は正常にインストールされました。
-------------------------------------------------------------------------------
デフォルト ゾーンで TCP ポート 8014 (エージェント Web サービス)、8016 (エージェント データ サービス)、および 8021 ( エージェント通信サービス) が有効になっています。
デフォルト ゾーンで UDP ポート 67 (BOOTP サーバ) と 69 (TFTP サーバ) が有効になっています。
他のゾーンでこれらのポートを有効にする必要がある場合は、システム コマンド firewall-cmd を実行してください。
Arcserve UDP Agent(Linux) サーバにアクセスして管理するには、以下の URL アドレスを使用します: https://arc-cent-agent01:8014
-------------------------------------------------------------------------------
インストーラでは、この UDP Linux バックアップ サーバを Arcserve UDP に登録できるようになりました。この手順を省略し、このノードを Arcserve UDP の Web インスタンスから登録することができます。そのためには、[ノードの追加] - [Linux バッ クアップ サーバ ノードの追加] をクリックします。
Arcserve UDP を今すぐ登録しますか? [y|n] (デフォルト: n) n
この UDP Linux バックアップ サーバは Arcserve UDP にいつでも登録できます。そのためには、[ノードの追加] - [Linux バックアップ サーバ ノードの追加] をクリックしてください。
サーバを開始しています... [完了]
[root@centos-agent01 /]#
これで、CentOS 7.3へのUDP agent for Linuxのインストールが完了です。余談ですが、上記のインストールプロセスの中で見えている通り、Live CDも作成されることになります。
<参考ドキュメント>
インストール Arcserve Unified Data Protection Agent for Linux
3. バックアッププランの作成
今回は対象がLinux物理サーバとなりますので、エージェントベースのバックアップをUDP ConsoleをインストールしているWindows VMの共有フォルダへ保管するプランを作成します。バックアップサーバは先ほどagentをインストールしたCentOSを指定します。ちなみに今回はRPSデータストアは使用しません。
はじめにUDP Consoleで「プランの追加」を開始します。
任意のプラン名を付けて「バックアップ: エージェントベース Linux」を選択します。
はじめにLinuxバックアップサーバを追加します。今回は先ほど作成したCentOSを指定します。ここでエラーとなった際、ほとんどの場合はバックアップサーバからUDP Consoleへの名前解決が失敗していますのでご注意ください。
続いて今回のバックアップ対象となる物理Linuxマシンを追加します。Windowsの共有フォルダへバックアップを取得する場合は、対象の物理Linuxにも「cifs-util」を事前にインストールしておきます。
続いて「デスティネーション」タブにて、バックアップ保管先を選択します。今回は「ローカルディスクまたは共有フォルダ」を選択し、UDP ConsoleのWindows VMの共有フォルダを指定しました。
スケジュールや拡張機能などはそのままで「保存」をクリックしてプランの作成を完了します。
展開されたプランが確認できました。
<参考ドキュメント>
バックアップ プランの作成
4. バックアップの実行
バックアッププランの作成が完了したら、ベアメタル復旧用のリカバリポイントを取得するため、アクションから「今すぐバックアップ」を選択します。
増分バックアップでそのまま「OK」をクリックします。増分ですが初回はフルバックアップになります。
ジョブ画面でバックアップの進捗が確認できますので、完了するまで待機します。
完了後、バックアップ先として指定したローカルの共有フォルダへリカバリポイント(バックアップ)が保存されていることが確認できました。
5. Live CDの作成
Linux系のOSでは、ベアメタル復旧時にLive CDを使用します。Live CDはバックアップサーバにて作成します。移行先の仮想マシンからLive CDをブートしIPを設定すると、バックアップサーバから移行先として指定することができるようになります。
Live CDは「Live CD」と「CentOS用Live CD」の2種類があり、それぞれの違いについては以下のリンク先をご確認ください。
Live CD の前提条件および考慮事項の確認
今回は対象が物理CentOSマシンなのでどちらを使っても復旧できます。せっかくなので両方ともご紹介します。なお、Live CDの作成には、リストアユーティリティパッケージが必要となりますが、こちらはバックアップサーバへUDP agent for Linuxをインストールする時に自動で一緒にインストールしてくれるので、特に意識しなくても大丈夫です。
5-1. Live CDの作成
Live CDには主に以下の特長や制限があります。
Live CDは手動で作成することも可能ですが、UDP agent for Linuxをインストールする時に以下のように自動で作成してくれますので、こちらをそのまま使います。
-rw-r--r--. 1 root root 1546815488 11月 28 11:51 UDP_Agent_Linux-LiveCD.iso
[root@arc-cent-agent01 /]#
このLive CDをPrismからイメージサービスへアップロードしますので、作業用の端末などにダウンロードしておきます。
Live CDはバックアップサーバのAgentコンソールのリストアウィザードからもダウンロード可能です。
<参考ドキュメント>
ブート可能 Live CD を作成する方法
5-2. CentOS用Live CDの作成
移行対象のLinuxがCentOSの場合は、CentOS用のLive CDを作成することもできます。Cent OS用Live CDには主に以下の特長や制限があります。
CentOS用Live CDを作成するには、はじめにCentOSのミラーサイトなどから対象のバージョンのLive CD用の(.iso)ファイルをダウンロードします。その際「LiveGNOME」と名前がついているものを使用します。今回は、CentOS 7.3用の「1611」をダウンロードしました。
このISOファイルをバックアップサーバの「/tmp」配下へ配置します。
-rw-r--r--. 1 root root 1245708288 11月 28 14:57 CentOS-7-x86_64-LiveGNOME-1611.iso
[root@centos-agent01 /]#
実行結果は以下の通りです。作成に10分以上かかる場合もあります。
ソフトウェア パッケージの依存関係を確認しています... [完了]
/tmp/CentOS-7-x86_64-LiveGNOME-1611.iso からファイルを抽出しています... [完了]
CentOS Live CD ファイル システムを解凍しています... [完了]
CentOS Live CD ファイル システムを変更しています... [完了]
CentOS Live CD ファイル システムを圧縮しています (この操作には数分かかる可能性があります) ... [完了]
CentOS ベースの Arcserve UDP Agent(Linux) Live CD イメージ ファイルをパックしています... [完了]
CentOS ベースの Arcserve UDP Agent(Linux) Live CD を正常に作成しました。
ISO イメージ ファイルは /opt/Arcserve/d2dserver/packages/CentOS-LiveCD-for-UDP_Agent_Linux.iso にあります。
[root@centos-agent01 bin]#
完了すると「/opt/Arserve/d2dserver/packages/」配下に作成したCentOS用のLive CDが保存されます。
-rw-r--r--. 1 root root 2159478784 11月 28 15:21 CentOS-LiveCD-for-UDP_Agent_Linux.iso
-rw-r--r--. 1 root root 1546815488 11月 28 11:51 UDP_Agent_Linux-LiveCD.iso
[root@centos-agent01 bin]#
こちらも使用する際は、移行先AHVのPrismからイメージサービスへアップロードしますので、作業用の端末などにダウンロードしておきます。
<参考ドキュメント>
CentOS ベースの Live CD の作成方法
6. Live CDをAHVのイメージサービスへ登録
移行先AHVのPrismへログインし、作成したLive CDを「イメージサービス」へ登録します。「イメージ設定」→「+ イメージをアップロード」の順にクリックします。
アップロードするイメージの名前・形式、保存先のストレージコンテナ、アップロードするLive CD ISOを選択して「保存」をクリックします。
アップロードが完了すると一覧へ表示され「ACTIVE」となります。今回は「Live CD」と「CentOS用Live CD」の両方をアップロードしてみました。
<参考ドキュメント>
Configuring Images
7. リストア先となる仮想マシンをAHV上に作成
まずはリストア先となる仮想マシンを作成します。Prismで「仮想マシン」→「+ 仮想マシンを作成」をクリックします。
仮想マシン作成は流れを紹介します。ポイントは以下です。
- イメージサービスへ登録したLive CDをCDドライブへマウント
- 移行元と同程度または少し大きめの空のvDISKを追加
- vNICをバックアップサーバやリカバリポイントの保存先に疎通性のあるAHV仮想ネットワークへ接続
今回は「Live CD」と「CentOS用Live CD」の2パターンで仮想マシンを作成しました。
<参考ドキュメント>
Creating a VM (AHV)
8. Live CDからブートし IPアドレスを設定
8-1. Live CDの場合
まずは作成した仮想マシンをPower ONし、コンソール画面を起動します。Live CDからブートされ、以下のようにNICの設定をするように促されます。
<Enter Shell>をクリックします。
シェルのコマンドラインで「ifconfig」と「route add」を使用して、以下のようにIPアドレスを設定します。今回は移行先で使用したいIPと同じものを設定します。(別でも可)
bash-4.4# route add default gw 172.22.1.1 eth0
bash-4.4#
8-2. CentOS用Live CDの場合
CentOS用Live CDの場合も、まずは作成した仮想マシンをPower ONし、コンソール画面を起動します。CentOS用Live CDの場合は、GUIでOSが起動してきます。
デスクトップでターミナルを起動し、「ifconfig」と「route add」を使用して以下のようにIPアドレスを設定します。こちらも移行後に使用したいIPをはじめから指定します。(別でも可)
設定後は、ping等で疎通できるかご確認ください。
<参考ドキュメント>
Live CD の使用によるターゲット マシンの IP アドレスの取得
9. バックアップサーバーからリストア
今回はUDP Consoleからプラン作成やバックアップの実行などを行いましたが、リストア処理はバックアップサーバのAgentコンソールから実施します。
はじめにUDP Consoleから「リソース」→「Linuxバックアップサーバグループ」→サーバ選択→「アクション」→「リストア」を選択します。
バックアップサーバのAgentコンソールが起動したら「BMR」を選択して「OK」をクリックします。
バックアップサーバはそのまま自身が選択されていますので「次へ」をクリックします。
続いてリカバリポイントを指定します。対象の物理Linuxマシンやバックアップの保管先を指定し、取得済みの任意のバックアップを選択して「次へ」をクリックします。
続いてターゲットとなるリストア先のVMのIPを入力し、リストア後に設定するホスト名やIP情報を指定します。
スケジュール等はデフォルトのまま「今すぐ実行」とし「次へ」をクリックします
最後にサマリ画面を確認して「サブミット」をクリックします。
ベアメタル復旧のリストアジョブが実行されます。
完了後、リストア先のPrismで仮想マシンの編集画面を起動し、マウントされているLive CDを取り出します。Live CDを取り出さないと、Live CDからブートされてしまうためです。
仮想マシンを1度電源OFF・ONしてからコンソールを起動すると、無事ログインできました。こちらはLive CDでブートした仮想マシンのコンソール画面です。
CentOS用 Live CDでブートした仮想マシンのコンソールでもログイン確認ができました。
<参考ドキュメント>
Linux マシンに対してベア メタル復旧(BMR)を実行する方法
10. まとめ
今回は、物理LinuxマシンをArcserve UDPの「ベアメタル復旧」でNutanix AHV上へP2V移行してみました。Arcserveはこういった移行に使える機能もありますが、Nutanix AHVやFilesのバックアップももちろんサポートしていますので、移行後のバックアップソフトとしてもそのままご使用いただけます。
Nutanix AHVへもしP2Vされる機会があれば、ぜひご検討ください。
ではこのへんで。